わたしたちは有機野菜(オーガニック)と工業型農業(慣行農業)で生産された農産物のどちらを購入すべきなのでしょうか?
この記事を読むと有機野菜と慣行農業それぞれの野菜を生産する仕組みとその特性を知ることができますよ。
自分と大切な人の健全性のためにそして地球環境を守るためにもわたしたちの責任ある消費行動が求められています。
2022年5月2日『みどりの食料システム戦略』を公布
2022年5月2日、日本政府は有機農業(オーガニック)の普及と拡大を主導する『みどりの食料システム戦略』を公布しました。
わたしたちは有機野菜(オーガニック野菜)と慣行農業で生産した野菜のどちらを購入すべきなのでしょうか?
充実した食生活を送るためには両方の特性を知って比較する必要がありますよね。
この記事では有機農業(オーガニック)と工業型農業(慣行農業)という二大農業を解説していますので自分にとって最適な野菜を選ぶことができるようになります。
すべての農業形態はこの2大源流から派生しているので農業生産システムの全体的なイメージも理解できますよ。
わたしは有機JAS有機農産物生産行程管理の資格を持っており有機農産物の生産をおこなっております。
結論は有機農業と工業型農業の農産物を生産する仕組みを理解するだけで野菜を購入するときの判断基準を身に付けられるということです。
有機農業(オーガニック)の特性
[オーガニック(有機農業)は地球の生物を育む機能と調和しています]
1920年代に誕生した有機農業(オーガニック)と工業型農業(慣行農業)という2つの農業は2022年以降も世界各国でおこなわれています。
工業型農業は化石燃料や化学合成物質を使用するので高額な資金を必要とします。
そのため経済的に豊かな先進国を中心に普及しました。
有機農業はヨーロッパ諸国の先駆者たちによって提唱され国民運動による普及活動によって世界中に知られるようになったのですよ。
工業型農業は各国政府と化学者たちの主導によって主要産業となり近代農業や慣行農業(かんこうのうぎょう:一般的な農業の生産方法)とも呼ばれるようになり食料生産の主流になりましたよね。
有機農業と工業型農業の特徴を照らし合わせてそれぞれの農業の仕組みが地球とわたしたちの社会にどのような影響をもたらしているのかを簡単に理解しましょう。
オーガニック(有機農業)の特性は世界人口を養える持続可能な食料生産システム
[スーパーマーケットで販売されるオーガニック野菜(有機野菜)]
有機農業(オーガニック)のエネルギーは土壌生態系(土壌環境の中で発酵型微生物同士が共存するための相互作用)と地球が生物を育む自然循環機能そのものです。
オーガニック野菜の品質を向上させ生産量を高めるには土壌に棲息(せいそく)する有益な微生物を活発化させて増やせばよいのですよ。
生態系や自然環境の健全性を高めるということは地球が育むわたしたちも健(すこ)やかになるのです。
有機農業とは地球が生物を育む自然循環機能と調和してその働きを加速させることを目的としたシステム(仕組み)だと言えるでしょう。
オーガニック(有機農業)の特性1 食料の生産活動そのものが地球と人の社会を持続可能な未来へと導く
[アメリカ フィラデルフィアのファーマーズマーケット]
各国政府は自国のオーガニック(有機農業)の生産に関わる法律を公布しているので世界共通の有機農業規則は存在しませんが高水準の有機農業であるほど自然由来の資材のみを厳選して使用しています。[コーデックスガイドラインという有機農業の指針となる世界最低基準は定められています]
そのため有機農業は食料を生産するのに化石燃料を必要としません。
オーガニック(有機農業)は二酸化炭素の排出量を抑え地球温暖化対策を加速させる有効な手段の1つであることを国際連合食糧農業機関FAOは伝えています。
そして有機農業は化学合成物質を必要としないので高額な費用はかからないのです。
そのため発展途上国を含め、あらゆる国において普及することが可能です。
化学合成農薬および肥料を大地に投入しないので地球は汚染されることはありません。
有機農業を推進することは至急と人を含める多様な生物の健全性を高めることをインドのアンドラ・プラデシュ州政府は証明しました。
そして国際連合環境計画事務局長 インガー・アンダーセンは有機農業の生産システムは収穫量を20~200倍に増加させることが可能であることを伝えています。
出典 国連広報センター|ゼロ予算自然農法(ZBNF):インドで具体化する農業革命
[有機農業の農業形態に共通するのは最も重要なのは炭素資材であること]
オーガニック(有機農業)の特性2 世界人口を養うことが可能
国際連合の予想では世界人口79億5400万人(2022年)は2050年には97億人に増加すると言われています。
そんな中、国際連合食糧農業機関FAOとスイス有機農業研究所FiBLは3つの条件を満たすことにより有機農業による食料生産だけで世界人口を養うことが可能だという共同論文を2017年に発表しました。
有機農業の運営には化石燃料も高額な費用も必要としないため植物が育つ環境さえあれば世界中のどこでもすぐ始めることができます。
オーガニックが食料生産の主流になれば飢餓撲滅への大きな希望となり、さらに気候変動による地球の温暖化を改善することも可能であると言えるでしょうね。
出典 ドイツ発オーガニック専門番組|2050年までに100%有機農業で世界人口を養う「3つの戦略」とは?
ドイツ発オーガニック専門番組を運営しているドイツ法人オーガニックビジネス研究所-IOBのレムケなつこ代表はオーガニック専門家として有機農業を主導する活動家です。
オーガニックセクターの国連と呼ばれるIFOAMの『欧州本部リーダーシップ・プログラム』に日本人ではじめて抜擢(ばってき)されています。
オーガニックオーガニック(オーガニック)だけで世界人口を養うために満たすべき3つの条件
- 食肉の消費量を3分の1にする
同じカロリーを生産するとして家畜の飼育は野菜栽培の160倍の土地が必要です。
食肉の生産を3分の1に抑(おさ)えて野菜を栽培面積を増やすことで食料の安定供給につながるのですよ。 - 穀物(こくもつ)はおもに人間の食料とする。家畜の飼料としての利用を可能な限り抑(おさ)える。
工業型農業では畜産動物の成長を早めるために多くの穀物飼料を食べさせていますが人の食料でもあるために食料争奪を起こしているのです。
牛の主食は草であるため有機農業では飼料の50%以上は草を食べさせるという規則があるのですよ。
生物の性質に適した自然な生き方をすることで生態系のバランスは保たれるのですね。 - 可能な限り食品ロスを減らす(食品ロスとは食品を食べずに廃棄処分する行為のことです)
世界で生産されている食料の3分の1は食べられることなく廃棄されています。
食品ロスを止めることは世界中に食料を行き渡らせ飢餓を撲滅するための重要なプロセスであることは言うまでもないでしょう。
工業型農業(慣行農業)の特性
工業型農業の特性は生産工程の簡略化と化学の強制力です。
近代農業とも呼ばれる工業型農業の主要エネルギーは化石燃料であり、そのルーツは産業革命とつながっています。
1750年頃からばから1900年にかけて経済の中心は農業から工業へと変革し化学技術によって生産性は大きく向上しました。
農業もその影響を強く受けているのです。
1906年にドイツの化学者フリッツ・ハーバーによって空気中の窒素からアンモニアを合成するハーバー・ボッシュ法が開され化学合成農薬は大量に生産されるようになりました。
これが1920年頃に工業型農業が誕生した経緯(いきさつ)です。
有機農業も1920年頃に国民運動によって世界中に広まっていきました。
これらの二大農業が同じ時期に誕生したのは偶然ではありません。
工業型農業が地球とわたしたち人類に深刻な影響を及ぼすことを危惧(きぐ)したオーガニックのパイオニアたちは有機農業の提唱というかたちで世界中に警鐘(けいしょう)を鳴らしたのです。
工業型農業の特性1 生産工程の簡略化
[工業型農業(慣行農業)による農作物への農薬散布]
工業型農業の特徴である農業工程の簡略化とは主要な資材である化学合成農薬および肥料の働きによって理解することができます。
工業型農業の主要資材は化学的に合成された肥料・農薬・除草剤であり栽培工程の様々な場面で使用されているのですよ。
たとえば化学合成肥料を農地に投入することで農作物はその成分を根から吸い上げるので強制的に急激な肥大化を可能にしているのです。
そして化学合成農薬を農地に散布することで農作物の周囲にいる虫や菌を駆除して排除します。農作物は農薬の成分を根から吸収するので食害を防ぎ病気を抑制(よくせい)させています。
さらに化学合成除草剤を農地に投入すると農作物も被害を受けることになりますが雑草を枯(か)らして除草作業を省(はぶ)いているんですよ。
そんな工業型農業を象徴する『みどりの革命』は40年に及ぶ化学的な栽培実験であり1940年代から1980年代にかけてメキシコ・インド・アフリカを含む開発途上国の各地で行われました。
そして短期的で爆発的な生産力と地球と人を含む多様な生物の健全性を失わせるほどの水質および土壌汚染の実態を証明したのです。
工業型農業の特性2 遺伝子操作を代表とする化学技術とその強制力
出典 室蘭市|工場夜景
遺伝子組み換え農作物やゲノム編集農作物のように人が意図した通りの農作物を誕生させるという遺伝子操作は工業型農業の核となる化学の強制力を証明していると言えるでしょうね。
20世紀は工業型農業の時代だったと言えるでしょう。
1906年にドイツの科学者フリッツ・ハーバーは化学合成肥料の原料であるアンモニアを合成させる『ハーバー・ボッシュ法』を発明します。
これが工業型農業の始まりであり先進国の各国政府と化学者たちは食料生産を主要な産業のひとつとして発展させました。
化学は未知の領域が多い分野でもあります。
政界や学会は化学合成物質による地球や人への影響は低いと言われていましたが工業型農業の主要なエネルギーは化石燃料であり化学合成物質による土壌・水質・大気環境汚染も確認されていることから地球と多様な生物に大きな影響を及ぼしているのは明らかでしょう。
遺伝子を操作する化学技術も解明されていない未知なる領域です。
消費者であるわたしたちも自分と大切な人、そして地球を守るために注意深く観察し続ける責任があるでしょうね。
まとめ
自分と大切な人が健(すこ)やかであるために、そして地球の持続可能性のためにもわたしたち消費者が健全性の高い野菜を選ぶことは責任のあることですよね。
有機農業(オーガニック)の定義では世界が認めるオーガニックの価値を紹介しています。
そして[各国の有機農業]では世界最高基準のヨーロッパ諸国のオーガニックがどのような歴史を辿ってきたかを紹介しています。
これからも素敵なオーガニック情報を紹介していきます。